【上書き】(2024年8月4日)
〈出エジプト記21:12-22:19〉,前橋中部教会主日礼拝説教(要旨) 堀江知己牧師
朗読箇所の戒めはすべて、イスラエル共同体の秩序を守るために設けられたものです。よって、宗教的な要素だけでなく、極めて現実的社会的要素が強いです。また、奴隷制度が前提とされていた時代の律法は、私たちからすれば不完全であり、大きな欠陥があります。では、私たちの間に秩序を保つために、主はどんな掟を設けられ、どのようにして秩序を保とうとされているでしょう? それは、旧約の律法ではなく、主が残された掟、黄金律と呼ばれるものです(マタ7:12)。また、主は、イスラエルの共同体、あるいは教会だけに通用する掟を残されたのではありません。むしろ、外の隣人にも、全世界で適用すべき掟を残されました。この人類共通の掟こそが、私たちにとっての新しい掟、いわば新法です。旧約聖書に記された不完全な掟は、この主の黄金律によって、すでに上書きされています。パソコンで何百頁にもわたる文章を作り、たった一文字だけ変更して上書き保存すると、データ上はまったくの新しい文書となるように、上書きされる以前の掟は、たとえ内容がほとんど同じであったとしても、新しく上書きされた掟とはまるで別物であり、すべて無効なのです。よって、私たちは、すでに無効になった旧法ではなく、主によって上書きされた新しい掟、黄金律を心に刻み、それを守るように心掛けましょう。私たち罪人が裁かれないのは、すでに主によって、厳格な旧法が黄金律へと上書きされているからです。そして、旧約の掟が主によって上書きされたのは、それぞれ自分のためだけではありません。すべての隣人に対しても同様です。つまり、自分自身が許されるために、この新しい掟を大切にするのではなく、私たち自身、相手を赦し、愛するためにこの新法を大切にし、そしてこの新法の下で、お互いに生かされなくてはなりません。復讐心ではなく赦し合いを、憎しみではなく愛によって生き、神の民同士の間で秩序を保っていきましょう。